看板の落下事故と点検事情の最前線

看板が落下した際の責任の所在は?

 現在、私たち看板屋の業界内では“看板の点検”をどのように実施するべきか、業界団体内で点検の技能講習を行ったり、看板点検の資格(現在のところ民間資格)が設けられたりするなど、活発な動きがあります。

 発端は過去に起きた2件の看板落下事故でした。
2015年に札幌市「かに本家」の看板の一部が15mの高さから落下して通行人に直撃し、被害者の方は意識不明の重傷を負ってしまいました。
さかのぼって2007年には、新宿の雑居ビルで2階部分に取付けられた縦1.5m×横5mのイタリア料理店の看板が落下して通行人の女性が下敷きになり脳挫傷・骨盤骨折という重傷を負う事故がありました。
報道によればどちらの事故も看板の施工に問題があったうえに老朽化していて、点検も行われていなかったようです。

 このような看板の落下事故が起きてしまった場合、まず最初に責任を問われるのは看板の「占有者」(=看板を使っている店舗や企業)です。
また看板の「占有者」が看板の維持・管理を怠っていたとしても、その建物の「所有者」(=建物の持ち主。ビルオーナー)に責任が無い訳ではなく、民法717条によって「無過失責任」(故意や過失がなくても損害賠償の責任を負う)があるとされています。
上記2件の事故に関する報道では、看板の「占有者=店舗側」が当初は「自分に責任はない」といったニュアンスの発言をしていたようですが、この考え方は通用しないのです。さらに、ビルオーナーも、「テナントさんが取付けた看板だから、ウチは知らない」というスタンスは民法717条によれば通用しないのです。
なお「占有者」「所有者」が被害者に賠償金を支払った後、看板の施工業者に責任が認められるなら施工業者に賠償請求してもよい(民法717条第3項)ことになっています。

屋外広告物の更新時に行われる安全点検

 看板の高さが4mを超えるもので屋外広告物の申請が行われていれば、2~3年ごとの掲出許可更新時に安全点検を行い、安全点検報告書を提出することが義務づけられています。
この安全点検、報告書の提出は必ず行ってください。これらの作業は、該当する屋外広告物の「管理者」(=看板の維持・管理を行う人)が行うことになっています。

 屋外広告物は申請する際に「管理者」を置くことになっています(サイズが小さく申請が不要な看板であれば管理者は不要)。
そのため屋外広告物の更新時の安全点検は、基本的には最初に「管理者」に登録された業者に依頼するのが一般的ですが、その業者が廃業してしまっていることなどもあるでしょう。
更新時に管理者を変更することも可能ですが、これには注意が必要です。屋外広告物を施工した際の図面などが残っていたとしても、本当にその図面通りに施工されているのか、施工した業者でなければわかりません。我々看板屋からすると、自社で施工していない広告物の「管理者」を引き受けることは大きなリスクを負うことになります。
ですが中には、わりと簡単に「管理者」を引き受ける看板屋もあるようです。ビルオーナーさんからすれば“いい業者”かもしれませんが、安全性の担保という視点から見ると疑問が残ります。
いっぽうで、“自社施工していない屋外広告物の管理者でも引き受けるけど、徹底的に点検する”という看板業者もあり、最低でも50万~60万くらいの費用をかけて様々な検査をします。
万一看板の落下事故が起きて人的被害が出た場合、被害者の方への賠償だけでなく、建物の資産価値の下落も起こり得ますので、昨今では後者のような点検を行う「占有者」「所有者」が増えてきているようです。

安全点検・報告書の提出が義務づけられていない看板はどうするか?

 高さが4mを超えない看板、表示面積が10平米を超えず屋外広告物申請の必要がない看板(管理者が不要の看板)には、安全点検の実施、役所への安全点検報告書の提出義務はありません。だからといって、古くなった看板を放置しておけば、看板の落下事故のリスクにつながります。

管理者不要の看板であれば、サイズも小さく比較的簡単に点検を行えます。
興和サインでは、看板のサイズや設置場所の高さにもよりますが5万円~(税別)で点検を行います。

先述した「徹底的に点検して50万~60万円」とは違い特別な検査機器などは用いずに、看板のアクリルを外して内部の腐食のチェック、看板本体と建物壁面をつなぐブラケット、ボルト、アンカーの腐食のチェック、ボルトの締め付け、ネジの緩みの確認といった作業になります。
このような点検は、点検実施後に何年保証等を付けられるものではありませんが、古い看板に少しでも不安を感じるような場合はおすすめいたします。

また興和サインでは看板の撤去をおすすめする場合、合わせて看板を交換する見積りもご提示させていただきますので、看板の撤去・新規作成・取付けまでをスピーディに行えます。

看板点検の一例
  • 看板点検の一例
  • 看板点検の一例
  • 看板点検の一例
  • 看板本体と建物をつなぐブラケットのカバーを外して、腐食の進み方を確認。また、ナットの緩みがないか、確認します。
  • 看板点検の一例
  • 看板表面のアクリル板を外して、内部の腐食の進行具合を確認します。
看板の点検 参考価格
・脚立、ハシゴによる作業・・・ 5万円~(税別)
・高所作業車による作業・・・・・・15万円~(税別)
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