顔ハメ看板二ストの塩谷朋之様

これまでにハマったその数4200枚以上、顔ハメ看板ニストが作った顔ハメ看板とは?

顔ハメ看板二ストの塩谷朋之様

 

顔ハメ看板ニスト:塩谷朋之さんについて

1983年生まれ。
学生時代から各地の顔ハメ看板で写真を撮り始め、現在までにハマった看板が約4200枚。
2011年にツイッターを始めるとすぐに注目され、「タモリ倶楽部」(2014年)はじめテレビ・ラジオや雑誌・新聞など数多くのマスメディアに取り上げられる。
2015年に自由国民社より「顔ハメ看板ハマり道」を出版。2019年には2作目の著書「顔ハメ百景 長崎天領ぶらぶら編」(阿佐ヶ谷書院)を上梓した。今では誰もが認める顔ハメ看板の第一人者。
本業は制御システム設計会社「友伸エンジニアリング」の総務課長。同社倉庫の壁面看板も塩谷さんからのご依頼により興和サインで制作。
2019年の塩谷さんの出版記念イベントで使用する移動式顔ハメ看板を、興和サインで制作している。

▶塩谷朋之氏ツイッター:https://twitter.com/shioya20

顔ハメ看板ニスト:塩谷朋之さん

顔ハメ看板ニスト:塩谷朋之さん

興和サインさんなら期待以上のものを作ってくれると確信した理由。

● 2冊目のご著書出版にあたり、興和サインで顔ハメ看板を制作することになった経緯を教えてください

顔ハメ看板ニスト:塩谷朋之さん

塩谷さん:最初の本を出した時、出版社が広告代理店に依頼して、本の表紙をそのまま大きくしてスチレンボードに貼った宣伝用の顔ハメ看板を作ってくれました。出版記念イベントを初め、いろんなメディアに出演させてもらった際に結構重宝しました。
だから今回も何か作ろうと思ったんですが、2冊目の本は長崎が舞台なので、必然的にイベントとか記者発表といった、プロモーション活動も長崎で行うことが多くなります。そうなると、前回みたいな大きさだと持ち運ぶのが難しい。飛行機に乗る時には機内持ち込みはできないから預けることになりますが、スチレンボードでは強度的にも問題がありそうで、頼りになるプロに相談しなければ‥‥と、考えてい るうちに、頭に思い浮かんだのが興和サインさんでした。
興和サインさんには、3年くらい前に僕の勤めている会社の倉庫の看板を作ってもらったことがあって、その時の経験から「きっと期待以上のものを作ってくれるに違いない」と確信したんです。

● お勤めの会社の看板製作を、興和サインに依頼された時のことを教えてください。

塩谷さん:知り合いに紹介されて以前から高橋社長のことは存じ上げていたので、会社の倉庫の看板をリニューアルすることになった時、真っ先に相談に乗ってもらいました。うちの会社はビルや工場などの様々な施設や機械の中枢となる制御システムの設計が主要業務で、看板で集客するような業種ではありません。

友神エンジニアリング

「会社の名前を宣伝する目的じゃないので、あまり高いところにつける必要はありません。看板を背景に人物写真が撮れるようなスポットにすれば、いろんな場面で役に立ちますよ」。現場をご覧になった高橋社長は、即座にそんな考え方を提案されました。

後日様々なアイデアの詰まったデザイン案を多数ご提案いただき、その中から社名の下の真っ青な帯に、弊社の社是がくっきりと入ったシンプルな案を採用させていただきました。

新しい看板のかかった倉庫の一角は、社長のご提案通り「写真の撮れるスポット」として、マスコミや業界紙の取材時には必ずそこで撮影してもらうなど、広報活動の様々な場面で活躍しています。考えてみれば、看板が「写真」に撮られ、「メディア」に乗って、より多くの人の目にとまるようになるっていうのは、まさに顔ハメ看板をめぐる状況とそっくりです。

ポータブルな重量・大きさに加え
高い耐久性と組み立ての簡単さまで兼ね備えた
「移動式顔ハメ看板」はいかにして誕生したか?

● 出版記念イベントのために興和サインに発注した移動式顔ハメ看板の制作過程について教えてください

塩谷さん:デザイン自体は本の中に使っているイラストをそのまま使うことが決まっていたのですが、使い方が特殊なので、どうすれば機能的で、使い勝手のいいものにできるかをご担当の矢島さんとよく相談しました。どんな条件をクリアし、どんな機能が必要なのか、まずはそれを二人で練り上げたわけです。

<移動式顔ハメ看板に要求される機能・条件>

  1. 看板の高さは170センチくらい。
  2. 移動時は手に持って運べる大きさ・重さであること。
  3. 飛行機など様々な交通機関による移動や、繰り返しの使用に耐えられる強度があること。
  4. 短時間で簡単に組み立てられること。
  5. 使用時に外れたり、倒れたりしないこと。

矢島さんが、苦心してそれをひとつ一つ具現化していってくれました。
出来上がってみると全ての条件をクリアする優れものでした。

興和サイン 矢島

矢島:決め手は素材の選択だったと思います。看板の素材で軽くて丈夫なものといえば、アルミ複合板ですが、切り口が鋭利なので、顔をハメた時に皮膚を傷つけたりする危険性があるんです。そこで普段看板には使わないような素材までいろいろ探して、紙製のハニカムボードに行き着きました。段ボールに似ていますが、建築資材として利用されたり、荷物を運ぶパレットにも使われている、とても丈夫な素材です。

塩谷さん:前回の看板はスチレンボードだったから、使っているうちにあちこちへこんだり端が折れ曲がったりしましたね。

矢島:スチレンボードだと、飛行機に乗せて運んだりするのはちょっと厳しいですよね。今回の素材はそう簡単にヘタることはないと思います。折り畳む仕掛けもいろいろと試行錯誤したんですが、折るとどうしても表面にシワがついたりして美しくないし、劣化もしやすいので、結局二分割してマジックテープで貼り合わせることにしました(下図参照)。

顔をハメるふたつの穴の部分を取り外し式にしたんですが、丸い板がしっかりはまってポロッと落ちてしまわないようにするのに、結構苦労しました。

組み立て

イベント参加者の反応から実感した「移動式顔ハメ看板」の多様な魅力

● 実際お使いになって、関係者とかイベント参加者の反応はいかがでしたか?

顔ハメ看板ニスト:塩谷朋之さん

塩谷さん:新しい発見がたくさんありました。まずは思っていた以上に注目を集めたってことですね。持ち運び可能な顔ハメ看板なんて、誰もがはじめて見るわけだし、一体どんなものだろうと思ったのではないでしょうか。普通の顔ハメと違って、どこかに常設されているわけじゃないから、見る機会が必然的に限られます。そういうレア感も、余計に興味をそそるんだと思います。

それもこれも興和サインさんにお願いして、ポータブルなのに本物志向のしっかりしたものを作っていただいたおかげだと思います。さらに予想外だったのは集まった人たちが、組み立てているところを 面白がって見ていたことです。まるで、それ自体を一つのパフォーマンスとして見物してるみたいな感じでした。

矢島:SNSの時代になって顔ハメ看板がどんどん増えているようですが、他の看板でもソーシャルメディアの影響は年々大きくなっているんですよ。弊社で進めているエンタメ系看板、中でもトリック3D アート看板などは顔ハメ看板と同じように、来た人に写真を撮って楽しんでもらう看板なので、SNSとの親和性は非常に高いです。

塩谷さん:顔ハメ看板の元祖が生まれたのはおよそ150年くらい前ですが、これは写真機の実用化が一気に進んだ時期と重なってるんですよ。考えてみれば当たり前ですよね。カメラがないのに顔ハメ看板の発想が生まれるというのは考えにくいですから。これってどことなく今の状況に少し似ているような気がしませんか?

矢島:なるほど、似てますね。

興和サインはただ看板を作るだけじゃなくて、看板の可能性を広げようとしている会社なので、常に新たなチャレンジをしていくことが必要とされています。今回SNSと連携する看板を、塩谷さんのような顔ハメニストと一緒に企画できたことは自分にとって大きな経験値になりました。

塩谷さん:確かに一緒にお仕事をしてみると、興和サインさんは看板というものから、何か新しいチカラを目覚めさせようとしてる感じがします。これからももっと面白いものを見せてくれるんじゃないかと期待しています。

興和サイン 矢島

興和サイン株式会社 クリエイティブディレクター・屋外広告士
矢島大輔
やじまだいすけ

[プロフィール]
1976年生まれ。東京デザイン専門学校卒業後、広告代理店に入社。新聞、雑誌の広告、チラシなどのデザインを担当するが、すべてが短期間で消えてしまうものよりも、長く形に残る仕事に魅力を感じて、オリジナル玩具・プレミアムグッズ制作会社に転職。グラフィック=2次元から、製品=3次元のデザインに携わるようになって、様々な素材や加工技術にについて知識・経験を積んだ。その後、2009年興和サインに入社。
デザイナーとして様々な業種の看板デザインを経験。現在はクリエイティブディレクターとして、デザインにとどまらず、制作・施工まで一貫してディレクション。お客様が求めるものに一手間加えた提案を追求している。

看板談義~序章~

高橋社長:この間、「所さん!大変ですよ」の取材の時、番組ディレクターからの相談で、塩谷さんに教えてもらったでしょう?変わった撮り方する人?

塩谷さん:ああ、裏から撮る人。

高橋社長:あの人は人気なんですか?

塩谷さん:SNSのインスタグラムだけでやってるんですけど。やっぱりすごい変わってるんで、飛びつかれてというか。

高橋社長:なんていう人でしたっけ?

塩谷さん:えーと、らんちゃんていう名前でやってますね。(らんちゃんツイッター https://twitter.com/urapane_secret

高橋社長:(スマホで検索)

塩谷さん:「裏パネ」とか入れると出てくるかな?

高橋社長:ああ、この人だ。顔は出してないね。

塩谷さん:顔は一切出してないです。顔出しNGなんです。

高橋社長:僕もこの間NHKの人に言われて初めて知ったんですけど。これすごいですよね。

塩谷さん:面白いですよね。元々そういうB級というか面白いことが好きな人で顔ハメ看板も大好きで、後ろから撮ったら滑稽だったんで、まあ前からも撮ってるんですけど、 後ろからも撮るようになって。

高橋社長:塩谷さんも、顔の表情を意図的に消してるのが特徴だよね?

塩谷さん:そうですね。顔ハメ看板が、主役だと思ってるんで。

看板談義

看板談義

高橋社長:そこに面白さがあるわけだよね。だから他の人が顔出すのと、塩谷さんが顔出すのじゃ、全然違うってことだよ。おんなじ顔出してても。

塩谷さん:あと、同じ構図で撮り続けてるっていうのは、結構珍しいかも知れない。それがひとつスタイルになってきているっていうのは、あるかも知れないですね。

高橋社長:面白さってどこにあるんですかね? 顔ハメ看板にハマる面白さって。

塩谷さん:最初は何気なくあれば撮る、という感じだったんですけど、より意識して積極的にハマるようになったきっかけは、ある時捨てられてる看板を見つけて、撮ろうと思ったときに、作った人がやってきて、わざわざ立て付け直してくれて。そんなに熱心に撮ってくれる人がいるんならって言って、とても喜んでいたんですよ。それを見たときに、ハマってくれる人がいるから、作ってるんだって、初めてわかったんですよ。宣伝とかも一切描いてないものだったので、その方は人が喜んでくれるためだけに一心に作ってるんだと思って、これは心してハマらなければいけないという風に、気持ちの入れ方が変わったというわけです。

高橋社長:なるほどね~。ところで、実は塩谷さん監修の“顔ハメ看板グッズ”を作りたいなと思ってるんですよ。これなんだけどさ。なんだかわかりますか?なんのモチーフになってるか?

塩谷さん:M。あ、開脚してるのかな?

高橋社長:そうそう。これは、女性が開脚しているお股で、ここのところから顔出せると、どうですか?こういう顔出しグッズっていうのは。

塩谷さん:これですね。似たような看板自体は韓国にあるんです。

看板談義

高橋社長:日本にもMっていう文字のやつはある。

塩谷さん:あ~あ~。そうですね。

高橋社長:どうですか?

塩谷さん:いいすね。

高橋社長:こういうのを顔ハメ看板にしたら、ハマりたいですか?

塩谷さん:韓国のラブミュージアム、日本で言うあれですね。秘宝館みたいなところにあるんですけど。そういうところにはこういうのが置かれがちなんですけども、一歩突き進んでる感じですよね。だからネットに上がりやすいとは思います。

看板談義

高橋社長:例えば、こういう感じのもので、企業がこれを広告媒体として、使うとか‥‥。

塩谷さん:イベントに使えるかもしれませんね。

高橋社長:でもやっぱり韓国に似たのがあったら、面白くないですかね。

塩谷さん::同じことを2カ所でやってると、やっぱりつまんなくなっちゃうっていうのはあるかもしれませんね。広告媒体としてすごい話題になった例でいうと、湘南に元々あったビールの宣伝用顔ハメ看板に、チューブの前田さんがビールを持っている人形を顔を出した格好で置くというのをやってったことがあったんです。元々看板自体は、そこにあるものなんですけども、前田さんの人形を置いただけで、芸能人と一緒に撮れてる感もあるし、結構話題になりましたね。

高橋社長:そういう話題性を作りたいんですよ。この看板作って、塩谷さんと、らんちゃんふたりでハマってもらったら、ちょっとバズらないかな?(笑)。

塩谷さん::いいと思います。監修みたいなので、一回お願いされたんです。マニアフェスタで、一緒に出たイベントがあって、ふ たりでどんな顔ハメにハマりたいか、みたいな話をしたことありますね。

高橋社長:そういう面白さで、楽しい看板を遊びで増やしていきたいですね。僕らの会社もそういう方向に、軸足移して行こうかなと思っているわけですよ。

塩谷さん::面白いですね。

高橋社長:これ(M字)元々アートっぽくわざと、ここにカラフルに着色してくとか。別に厚みがある必要ないんだけど、絵を面白く描いてったりすれば、Mシリーズでいろんなバリエーションが作れると思っているわけ。

塩谷さん::面白いですね。シリーズものとかで一堂に集めると、ちょっと壮観だったりします。

高橋社長::結局僕が狙ってることを正直にいうと、看板というのは広告宣伝のツールなんだけど、その一方で、民度とか、経済とか、そう言った文化的なものが反映された、今の現状を示す記号だと思ってるんですよ。

塩谷さん::なるほど。

高橋社長:古いレトロなお店があるところには、ひなびた感じ古い看板があるとか。なんかそういう、空気とか、雰囲気を味わう記号のような気がするんです。うちの会社の一階にあるレトロ看板とかも普通の人にとってみたら、二束三文のゴミかもしれないけど、僕の中では明治とか、昭和の初期の物っていうのは価値があって、やっぱり今の看板の作り方に比べると、手が込んでるとか、細かくて非常に芸術的だったりするんですよ。
今ネット社会だから、そんなに多くないかも知れないけど、飲食店なんかでも看板みて店を選ぶ人っているじゃないですか? どういうお店が良いかを推理する楽しみもあるし、看板を読む面白さというのも啓蒙できたらと思ってます。

塩谷さん:面白いなと思うのは、僕と嫁と一緒に出かけて行って、入りたい店が違うんですよね。それは嗜好が違うから当然なんですけど、僕はどちらかというと看板をみて、一見すると、美味しくなさそうだけど、何が起こるんだか分からないような店に入りたいタイプなんで、妻にしてみれば、なんでこんな店にわざわざ入りたいの?と思う。感じるものも、発信するものも一緒なのかも知れないですけど、興味の向かう対象が違いますよね。
お店の人は美味しくなさそうに見せようなんて思う人はいないわけで、自分は良かれと思ってやってるんでしょうけど、それを受け取る側が、どう思うかは未知数だったりします。 高橋

高橋社長:そうですね。世の中には、キタナウマイ店っていうのが逆に人気だったり、しょぼくてボロい外観だから美味いとかね。だから推理するのが楽しいんですよね。

塩谷さん:そういうところに入って、「当たり」だとやっぱり嬉しいですよね。

看板談義

看板談義

高橋社長:逆に看板ボロくて、やっぱり不味かったっていうのは寂しいですけどね。でも当たりかハズレかは、なんとなく分かるんじゃないですか?

塩谷さん:そうです。なんとなく分かりますよね。そういうのが面白いと思います。この街の中にあるこの雰囲気だから美味しそうとか、なんかそう言ったものに繋がってくのかなって感じですね。

高橋社長:逆で、僕いま考えてるのは、今の話の延長線上から、ちょっとずれるかもしれないけど、看板の写真集出そうと思ってるんですよ。どういう写真集かというと、外国人の方に東京の風景っていうのを知ってもらうのに、自然の風景だけだったらどこの国かわからないけど、日本語で書いてある看板っていうのは日本を象徴する記号じゃないかと思うんですよ。東京の山手 線の全部の駅の周辺の看板を自分なりのフィルターでチョイスして、パズルのように嵌め込んで見せたら面白いんじゃないかと思うんですよ。
「大塚」とか、「巣鴨」とか、「品川」とか、それぞれの駅ごとに看板の写真を分類して並べて、写真集に記載する文字情報としては、渋谷とか、池袋とか駅という文字だけを外した場所をシンプルに英語やハングル、中国語とか、5言語くらいで表記するだけ。看板に対するそういう構造の作り方でアプローチをしてみようと思っているんです。僕は看板屋だけど看板を作るだけじゃなくて、今ある風景を看板で切り取って見る。日本だと広すぎるけど、山手線だと一周円になっていてわかりやすい。駅ごとにチェーン店の看板なんかもあるけど、それはそれで風景でいいと思うんですよ。外国人の方にぜひ見てもらいたいなと。
実は自分は出版社持ってるんですよ。去年興和パブリッシングていう出版社作ったんですよ。もうすでにISDNコードとかJANコードとか全部持ってて、自分たちの会社で、本出せるんですよ。

塩谷さん:面白そうですね。

高橋社長:作るってことも本業だけど、古いものとか、今ある看板をどうアーカイブするかってことにも取り組んでます。それとさっき話したみたいな参加型で、イベントに使ってもらえるような面白い商品も開発したいと思ってます。そんな感じだから、もう看板をつけると集客効果が上がりましたとか、売り上げ効果が上がりましたっていうのと全然違う話をしてるじゃないですか。
そういうところに軸足をずらしていかないと、と思うんですよ。今でも看板効果で商売やってる人はおられるけど、なんかこう時代遅れって気がするんですよね。看板で集客効果上がるって、僕もそういう本書いて、そういう話をしてたことがあるんですけど、そうじゃなくて、なんか看板でいかに楽しく遊べるかみたいなのがテーマになってきてると思うんですよ。そういう話をいずれ、塩谷さんとちゃんとテーマ決めて「看板談義」のトークを対談みたいに出来たら楽しいかなと思ってます。

塩谷さん:おっしゃってたように看板が生まれた瞬間て、一緒に撮るなんて発想がないわけじゃないですか。カメラ自体がないわけですから。やっぱり時代とともに、あり方が変わってくるのは当然だと思いますね。
つい最近、面白いなと思ったのが、日本オフィス家具協会の講習で聞いた話なんですけど、「いい椅子っていうのはなんだろう」っていうことを、ずっと哲学的に考え続けた結果、昔は人間工学に基づいて長時間座っても疲れないのがいい椅子だと思われてたけど、いまは働き方の変化に伴って、それが変わってきているということなんですね。例えば最近ではノマドワーカーみたいにカフェや、コワーキングスペースで働いたり、オフィスを構えない働き方をする人も出てきましたよね。そういう人たちにとっての「いい椅子」というものを突き詰めていくと、もしかしたら立ち上がれる椅子なんじゃないかっていう結論に達しつつあって、困ってますって言ってたんですよね(笑)。それと同じように当然看板もその時その時で意味合いが変わってきているというのはあるんじゃないでしょうか。

高橋社長:変わりますよねえ。

塩谷さん::かつては、看板でいかに人が店に入るか、だった時代があったのかも知れないですね。

高橋社長:ありましたねえ、昔美空ひばりの主演で「お嬢様社長」っていう看板をテーマにした映画があったんですよ。銀座のビルの上にネオン広告塔をつけたら街がどんなに綺麗で美しくなるでしょうみたいなセリフがあったりするわけです。終戦後間もない当時は、東京の復興はネオンからっていう標語があるくらい、ビルの屋上にはキラキラと輝く看板がたくさんあってよ かったって時代がほんとにあったわけ。でも、今はもうビルの屋上広告は京都なんかでは禁止だし、景観壊すって言われてどんどん小さくなったり、倒れて危ないとか、言われるようになった。それと、ネットがどんどん台頭してきたから、やっぱり役割変わってきましたね。さっき言われたようにタウンページとかが全盛だった昔は、、看板の集客効果って図れたと思うんですよ。もう10年以上前。15年くらいかなあ。まだタウンページ全盛の頃って「食べログ」も「ぐるなび」もなかったから、看板がとても力強かった。「京成立石」の看板て、ご存知ですか?。

塩谷さん::京成立石?

高橋社長:そう、もつ焼きの聖地の。潰れかけた商店街なんだけど、一昔前の味わいのある店がいっぱいある。そういうところには、今の看板の作り方では、作れないっていうか、作らないタイプの看板があるわけです。そういうのを保存したり、アーカイブしてとっときたいなと思ってるんですよ。実は古い看板集めるために、自分で古物商の免許もとっちゃったんですよ。

塩谷さん::あっ、そうなんですか?

高橋社長:だって古い看板収集するのに、古物の免許がないと売買できないから。

塩谷さん::やっぱりそうしてまで集めるっていうのは、放って置いたらなくなるからですよね。

高橋社長:なくなるし、今はデジタルが色々進化して、看板でもホログラムとか、新しい技術が次々現れるし、僕らもそういうものは積極的に取り入れてはいるんだけど、でも、やっぱり昔の古いものを、アーカイブしてくっていうのもひとつのビジネスになるんじゃないかと思ってるんです。さっき言ったみたいな写真で残すっていうのも、風景がどんどん変わっていく中で、今のうちにとっておけば10年後にまた価値を持つかもしれませんから、うちの会社にとっては事業のひとつなんですよ。でも、ただ儲けようとしてるわけじゃなくて、どっちかっていうと古いものを見つけたり、集めたりするのは好きだからやってるというのもあります。なかなか手に入らないものを手に入れた瞬間っていうのはすごく楽しい。

塩谷さん::その意味では僕も同じで、顔ハメ看板ていつかなくなっちゃうから写真撮っているんです。永遠にあるものだったら、撮らないと思うんですよね。

高橋社長:じゃあ看板の風景だけは撮っておいて、看板のこと聞かれたらパッて出せるようになればいい、というわけですね。変な看板とか面白看板をずっと撮ってるんだけ ど、それがほんとに楽しいんですよ。純粋に。あまりお金にならなくても。
今度NHKの「所さん大変ですよ」っていう番組に出るんだけど、看板は落ちてくるし、怪我する人も多いから危ないっていうところから始まるんです。(2020年1月16日放送)

塩谷さん::看板不要論じゃないけど、そういうことから始まるわけですね。

高橋社長:でも、危ないっていうのは面白過ぎて危ないってとこで、僕は場面転換に出てくわけです。僕が変な看板とか探して楽しんでて写真撮ってるじゃないですか?それをNHKが切り取ったわけです。話が来たときすごく嬉しかったですね。なんかそういった看板の嗜みとか面白がる人が集まるコミュニティができたら楽しいと思ってるんですよ。

塩谷さん:::事業のステップがそこまで行かれてるってことですね。企業というのは最初は自分の会社を大きくしようとするじゃないですか。でも、その段階が過ぎると、だんだんと業界をよくしようとか、環境とか地元をよくしようみたいな方向に向かいますよね。興和サインさんは、もうその段階に到達して、看板業界全体を盛り上げたいっていうか、面白くしたいってところを目指されているわけですね。

看板談義

看板談義

看板談義

看板談義

看板談義

高橋社長:まあそういう見方もありますよね。でも多分業界全体としては「安全」とかがテーマで、なかなか僕が思ってるとこには行ってないかも知れないんだけど。

塩谷さん::それは今後、絶対厳しくなってくるでしょうね、どう考えても。

高橋社長:そう。だからやっぱり今じゃ作らないような看板をたくさん今のうちに(笑)。言葉も含めて、いずれ消えてしまうかもしれない変な看板をたくさん撮り貯めておいて、それをストックすることが財産と思っています。一見すると非生産的な活動かもしれません。でもそれを飛び越えてやってかないと、なかなか面白くはならない。

塩谷さん::看板で集客できないと言っても看板がなくなったらつまらないでしょうね。

高橋社長:今だと看板だけでは売り上げ上がらないし、集客効果も逆説的に言えば期待しないほうがいい、とは言えるかもしれませんね。とはいえ看板出すことで売り上げ上げることができる場合もないわけじゃない。でもそこはなんか論じたくないんだよね。それは業界的にもそう言うこと言う人はいっぱいいるから。そういうこと言い続けても面白くないと思うんですよ。天邪鬼なんですね。

塩谷さん::でも今ほんとにとりあげてらっしゃるのは、この看板だとお店に人が入りますよっていうのからもっと引いてみて、なくなるとつまんないっていうのは風景だからですよね。風景の一部になってるところがやっぱり面白いわけですよね。

高橋社長:そうですね。とにかく看板には、何やら不可思議な力があると思います。
これからもぜひご一緒に、その世界で楽しく遊びましょう(笑)。

看板談義

続きはこちら